BSACとNAUIはここが違う。オープンウォーターのテキストを比較してみた
こんにちは。淳です。BSACとNAUIとを比較して特徴をシェアする記事です。
ダイビングを始めようと思ったら、通称ダイビングライセンスと呼ばれてるCカードが必要です。
Cカードは免許証(ライセンス)ではなく、ダイビング指導団体がダイビングを規定通りできると認定した時に発行する認定書です。
その認定書を発行するダイビング指導団体もたくさんあり、どこのCカードを取得するのが良いか迷われる方も多いと思います。
そこで今回は、世界最古のBSACと世界的にも歴史が長いNAUIとを比較していきます。
BSACとNAUIとの違いは大きくは次の通りです。
- NAUIは基礎から詳細まで分野ごとに縦割り的に学ぶ
- BSACでは、ダイブディレクター以上の資格のあるダイバー(ガイド)の管理の下でダイビングするのが望ましいとある
- BSACの学習内容は厳選されていて、NAUIで学習する項目の方が多い。
初めにこの記事ではテキスト内容をもとに比較しています。BSACはプール講習などでダイビング技術の学習が充実している可能性もあります。その点はお含みおきください。
今回比較するオーシャンダイバーコースは、Cカードの初級ライセンスです。
NAUIではスクーバダイバーコース、PADIではオープンウォーターダイバーという名称と同じ水深18mまでのライセンスです。
PADIとBSACで初級ライセンスのテキスト比較をした記事はこちら
ライセンス講習も掲載中
BSACとNAUIの学習内容の違い
学習順序の違い
- BSACは基礎学習を一巡後に詳しく掘り下げて学ぶ
- NAUIは基礎から詳細まで分野ごとに縦割り的に学ぶ
BSACのテキストは、チャプター1〜6と参考6項目で構成されています。
チャプター1とチャプター2とで、
- 水中での見え方や聞こえ方
- 圧平衡や空気の膨張
など水中に入ることで起こる基礎知識と
- ダイビング器材の名称
- ダイビング技術と緊急浮上やレスキューの手法
といった基本技術を学びます。
ここまででダイビングの基礎学習を一巡します。
ダイビングの全体を簡単に一巡したことでダイビングをイメージできます。
残りのチャプター3〜5で、
- 浮力や消費速度の変化、減圧症など物理や生理学の学習
- ダイビング器材の特徴と使い方
- 波など環境に対応する方法
といったより安全にダイビングに必要な知識を追加して学びます。
チャプター6は、オーシャンダイバー取得後のステップアップの解説になっています。
NAUIでは、チャプター1から11まであり細かく分かれています。
ひとつのチャプターで学習内容が完結しています。
器材、物理、水中での身体、環境と順番に知識を積み上げていき、ダイビングの安全で基本のレスキューやファーストエイドを学んで完了になります。
BSACもNAUIもテキストのチャプターに対し、限定された安全な水域での講習内容は対応していないです。
呼び方の違い
BSAC | NAUI |
---|---|
BCD | BC |
呼び方の違いは、浮力調整具のひとつだけでした。
数値の違い
BSAC | NAUI | |
---|---|---|
推奨される浮上速度 | 15m/分 | 9m/分(最大18m/分) |
窒素酔い症状の出現 | 30mを超える水深 | 24m前後 |
飛行機へ搭乗可能になる時間 | 24時間 | 18時間 |
安全停止の方法 | 水深3〜6m、1〜3分間 | 水深5m 3分間 |
ドライスーツへ衣替え目安 | 22℃ | 13℃ |
ダイブテーブルの範囲 | 3m〜39m | 12m〜40m |
ダイブテーブルの区切り | 水深3m刻み、13段階 | 水深3m刻み、10段階 |
ダイブテーブルの反復グループ | 7段階 | 12段階 |
タンクバルブの開閉具合 | 全開 | 全開後に4分の1回転閉める |
プール講習の回数 | 4回 | 2回 |
推奨される浮上速度は、BSACは推奨速度よりさらにゆっくりと浮上することが推奨しています。
最大浮上速度が15m/分と考えるとより遅い浮上速度を推奨していることになります。
飛行機搭乗は海水面よりも大きく圧力が下がることで、減圧症のリスクが高くなってしまいます。
そのため潜水後に航空機搭乗までに取るべき時間が示されています。
NAUIの18時間は減圧停止しないダイビングの場合です。
減圧停止を伴うダイビングをした場合は、BSACと同じ24時間となってます。
BSACの安全停止には水深と時間に幅があります。
水深はBSACが6m以浅、NAUIが5mと大きく違いませんし、実際に水深5mピッタリは難しいです。でも安全停止の時間が1分と3分では、身体から排出される窒素の量は変わると思われます。
BSACで学ぶこと学ばないこと
NAUIでは学ばないこと
- ブリーフィングの項目がある
- 分圧の説明がある
- レギュレーターの構造の説明がある
- ハンドシグナルの数が多い(22個と数字10個)
- NAUIでは名称で説明さていない事柄がある
BSACのテキストで印象に残ったのは「ブリーフィングの項目」です。
ブリーフィングというのは
- エントリーとエグジットの仕方
- 潜水時間と水深の限度
- ダイビングルート
- コミュニケーション
- 安全上の問題
のポイントを説明してもらうことです。
バディーでダイビングすることを前提としたNAUIにはない内容です。
ですが、実際にはインストラクターにガイドを依頼し、ブリーフィングを受けてダイビングすること多いのでブリーフィングをしてもらえることを知っておくことは安心につながりますね。
分圧というのは、
- 1気圧の場合。窒素が80%で0.8気圧を、酸素が20%で0.2%を作り出している
- 水深10mで2気圧になると。窒素が1.6気圧を酸素が0.4気圧を作り出している
という法則です。
「これがダイバーに様々な影響を与える」の説明に留められてます。
NAUIではもっとステップアップしてから学ぶ内容です。
ハンドシグナルの数の差は圧倒的です。
NAUIで説明される数少ないハンドサインで、「回収してくれ(水面)」がないのが意外です。
BSACでは名称付きで説明されてるが、NAUIでは方法だけ説明されてることをまとめました。
BSAC | NAUI |
---|---|
呼吸のトリミング | 呼吸を調整し肺の体積を変えることでも行う |
マスクブロー | マスク内の圧平衡は口から吸って鼻から出す |
オクトパスブリージングアセント | バディーのバックアップスクーバによる浮上 |
説明している内容は一緒で名称があるかどうかの違いだけです。
BSACでは学ばないこと
ダイビングの物理や身体への影響
- リバースブロック
- ヒートロスとハイポサーミア(低体温症)
- 頭部は体温喪失を50%程度生じさせる
- 酸素と一酸化炭素の特徴と危険性
- 肺の過膨張障害、エアエンボリズムのこと
- 残留窒素という概念
- 空気消費量の計算
- サーモクライン
- 淡水では浮力が異なること
- 高所潜水
リバースブロックとは、スクイーズと反対の現象のことです。
浮上することで、周囲の圧力が下がり空気が膨張することがリバースブロックの一因です。
体内にある空間の耳と副鼻腔の管が閉じてブロックされ圧平衡できない状態をリバースブロックといいます。
特に風邪や鼻炎の薬など服用していると途中で効果が弱まりブロック状態になることがありますので注意が必要です。
頭部からの体温喪失が大きいことと、体温喪失による危険性の学習項目がありませんでした。
体温喪失は重大事故につながる可能性があることです。ハイポサーミアの症状などは知っておく方が良いと思います。
ダイブテーブルの説明がBSACだと参考(appendix)の項目で説明があるだけでした。
繰返し潜水における残留窒素という概念も大切な項目です。
身体に良くない影響を与える窒素は完全に排出されるまで長い時間が必要です。
最初のダイビングから24時間以内行われたダイビングで体内に残っている窒素を残留窒素と呼びます。
2回目以降のダイビングは残留窒素を考慮したダイビング計画を立てる必要があります。
ダイビングのスキル
- 水中でのウエイトベルトの装着
- 水面と水中でのスクーバ器材の脱装
- コンパスナビゲーションの方法
- BCのパワーインフレーターの故障対応の方法
- 足のつりの対処方法
オーシャンダイバーコースのテキストの情報だけで、実際のダイビング講習を見たことないので断定は難しいです。
NAUIに比べてテキストで説明されているスキルの数は少ないように思いました。それでもプール講習の回数はBSACの方が4回とNAUIの倍の回数です。
実は学科講習で学ぶより、実際に身体を使って学ぶことの方が多いのかもしれませんね。
テキストでは写真だけだった水中マスクの脱着は是非練習しておきたいスキルのひとつです。
自ら好んでマスクを外すことはなくとも、
- 他の人のフィンに蹴られたり、
- ストラップが緩く飛ばされてしまったり、
というのは想定できるからです。
水中マスクに水が入ることにストレスを感じるダイバーが多いので、パニックを予防する上でも大切なスキルです。
テキストの特徴
BSACのテキストの特徴
- オーシャンダイバーコースの認定基準は明記されている
- 「安全が全てに渡って優先される」が基本ポリシー
- 「泳げなくても大丈夫」の項目がある
- 推奨活動範囲に「BSACダイブディレクター以上の資格のあるダイバーの管理の下でが望ましい」という一文がある
- 具体的な写真とオリジナルのイラストで視覚的に理解しやすい
- BSAC総裁のウィリアム王子からのお言葉が掲載されている
BSACは英国・ウィリアム王子が総裁を努めるダイビング指導団体です。
1953年10月15日に組織された最古のダイビング団体です。
一時期はNAUIも世界最古とうたっていましたが、現在はBSACが最古の団体と言われてます。
オーシャンダイバーコースの認定基準は、
- 学科・テストは、50問 正解率75%
- プールもしくは限定された安全な水域での実習を4セクション
- 海洋実習での4回の潜水
と明確にテキストに記載されています。
大きな違いを感じるのは推奨活動範囲です。
水深は18m以浅で、NAUIや他ダイビング認定団体と同じです。
BSACでは「ガイドの監視の下でダイビングすることが望ましい」としています。
これはアドバンスダイバーコースに相当するスポーツダイバーコースでも同様です。
NAUIではバディとダイビングすることが前提で学習します。
NAUIのテキストの特徴
- NAUIスクーバ認定はバディでダイビングを想定
- 物理的特性や潜水計画など知識教育が充実
NAUIスクーバ認定とは、講習と同じような海域、コンディションでバディでダイビングできる資格となっています。
BSACのテキストの「BSACダイブディレクター以上の資格のあるダイバーの管理の下でダイビングすることが望ましい」という記載はありません。
水中世界と陸上では環境が大きく異なること、特に空気と水の物理的特性の違いの学習内容が充実しています。
また、潜水時間の計画の項目は学科講習で使い方を学び、オープンウォーターでも実際に潜水計画と反復潜水の計画を立てることをします。
BSACのテキストのように、学科・テストの合格基準や限定された安全な水域での実習と海洋実習での潜水回数は受講者に明示されていないです。
オープンウォーターダイバーコースに入る前のオリエンテーションで説明されますが、
- コンファインドウォーターで2ダイビング
- オープンウォーターで4ダイビング
が標準的な回数です。
ダイビング教育団体PADIとダイビング指導団体NAUIとでテキストを比較した記事はこちら
まとめ:BSACはまず基礎を一巡、NAUIは詳細までまとめて学ぶ
- BSACは基礎学習を一巡後に詳しく掘り下げて学ぶ
- NAUIは基礎から詳細まで分野ごとに縦割り的に学ぶ
基礎だけ一巡してダイビングのイメージを作ってから、詳しい知識を追加する順序が特徴的です。
BASCとNAUIとで違う呼び方は、ひとつだけでした。
BSAC | NAUI |
---|---|
BCD | BC |
BSACとNAUIとで数字が異なるのは次の通りです。
BSAC | NAUI | |
---|---|---|
推奨される浮上速度 | 15m/分 | 9m/分(最大18m/分) |
窒素酔い症状の出現 | 30mを超える水深 | 24m前後 |
飛行機へ搭乗可能になる時間 | 24時間 | 18時間 |
安全停止の方法 | 水深3〜6m、1〜3分間 | 水深5m 3分間 |
ドライスーツへ衣替え目安 | 22℃ | 13℃ |
ダイブテーブルの範囲 | 3m〜39m | 12m〜40m |
ダイブテーブルの区切り | 水深3m刻み、13段階 | 水深3m刻み、10段階 |
ダイブテーブルの反復グループ | 7段階 | 12段階 |
タンクバルブの開閉度合い | 全開 | 全開後に4分の1回転閉める |
プール講習の回数 | 4回 | 2回 |
- ブリーフィングの項目がある
- 分圧の説明がある
- レギュレーターの構造の説明がある
- ハンドシグナルの数が多い(22個と数字10個)
- NAUIでは名称で説明さていない事柄がある
NAUIではバディダイビングが前提です。ガイドが付く前提のブリーフィングの説明があるのが特徴的です。
BSACでは名称があるのにNAUIでは名称がなかったのが3つありました。
BSAC | NAUI |
---|---|
呼吸のトリミング | 呼吸を調整し肺の体積を変えることでも行う |
マスクブロー | マスク内の圧平衡は口から吸って鼻から出す |
オクトパスブリージングアセント | バディーのバックアップスクーバによる浮上 |
- リバースブロック
- ヒートロスとハイポサーミア(低体温症)
- 頭部は体温喪失を50%程度生じさせる
- 酸素と一酸化炭素の特徴と危険性
- 肺の過膨張障害、エアエンボリズムのこと
- 残留窒素という概念
- 空気消費量の計算
- サーモクライン
- 淡水では浮力が異なること
- 高所潜水
- 水中でのウエイトベルトの装着
- 水面と水中でのスクーバ器材の脱装
- コンパスナビゲーションの方法
- BCのパワーインフレーターの故障対応の方法
- 足のつりの対処方法
BSACでは学ばないことが多かったのが印象的です。
初級コースだから実際に必要になりやすい内容を厳選しているのかもしれませんし、限定された安全な水域での実習で体を動かしながら学ぶことも多いのかもしれません。
- BSAC総裁のウィリアム王子からのお言葉が掲載されている
- オーシャンダイバーコースの認定基準は明記されている
- 「安全が全てに渡って優先される」が基本ポリシー
- 「泳げなくても大丈夫」の項目がある
- 推奨活動範囲に「BSACダイブディレクター以上の資格のあるダイバーの管理の下でが望ましい」という一文がある
- 具体的な写真とオリジナルのイラストで視覚的に理解しやすい
- NAUIスクーバ認定はバディでダイビングを想定
- 物理的特性や潜水計画など知識教育が充実
学科のテキストの文章での説明内容がBSACではNAUIに比べて少なかったです。
なのでテキストで予習しておくということは難しいのかもしれません。
ダイビング技術は実習で身体を動かしながら学ぶ部分も多いのかもしれませんね。
みなさまの大事なダイビング指導団体選びの参考になれば幸いです。
では。どこかの海で。