マリンレジャーは危険って本当?ダイビングの安全教育と訓練のリアル
ども。淳です。スキューバダイビングの安全教育について、特徴をシェアする記事です。
スキューバダイビングには水中に潜るので、
- 危険ではないのか?
- 事故とか多くないのか?
そんな危険なレジャーというイメージはありませんか?
海上保安庁の統計資料を確認すると、令和3年 マリンレジャーに伴う海浜事故数は、全体で820人、その内スクーバダイビング中は35人でした。
1番目と2番目に多い要因で占有率65%、ダイビングは占有率4.3%でした。
”事故ゼロがゴール”なので満足してはいけませんが、案外低い数字ではありませんか?
ヒトは陸上生活する生き物で、水中では息ができず生きていけないのでリスクは高くなります。
ダイビングに危険・リスクは伴いますが、ちゃんとリスクコントロールの方法を学び実践すれば安全で楽しいマリンレジャーになります。
ダイビングの安全教育と訓練、安全管理は、
- 初級ライセンス取得講習でも安全管理の知識と緊急時対応を学ぶ
- 座学とプール講習と海洋講習の3段階で、確実な習得を目指した講習を受ける
- ライセンス取得後もプロのガイド付きダイビングが主流
と充実した内容となっています。
ダイバーには、単なるスリルを求める人は少なくて、可愛い生物、綺麗な風景、浮遊感に癒しを求める人が多数派です。
安全に配慮された環境は整っています。安心してダイビングの世界へどうぞ。
ライセンス取得講習も掲載
海上保安庁資料にみる海浜事故の発生状況
スクーバダイビングの「マリンレジャーの海浜事故の発生状況」を確認します。
マリンレジャーに伴う海浜事故の事故者及び死者・行方不明者発生数…令和3年 820人
マリンレジャーに伴う海浜事故の活動別発生件数…スクーバダイビング中 令和3年 35人
活動別の集計項目は、10項目とその他です。
遊泳中、磯遊び中、釣り中、サーフィン中、ボートセーリング中、スクーバダイビング中、ウェイクボード中、スタンドアップパドル中、トーイング遊具中、ハイドロフライトデバイス中
統計資料にある過去10年間の発生件数は、遊泳中と釣り中が1番目と2番目を独占しています。
身近なマリンレジャーとして行う人口が多いことの影響は間違いなくあります。
それに加えて具体的な安全教育と訓練なく出来てしまうことで事故者数は多くなると推定できます。
スクーバダイビング中は、平成29年3番目(58人)、それ以降は一貫して減少し5番目と6番目とを繰り返しています。
スクーバダイビングでは危険性を認識して安全教育と訓練を初級ライセンスの時からおこなっています。
危険性・リスクを認識してコントロールするため、安全教育と認定制度が確立してるので安全に楽しむ環境は整っています。
危険な側面を認識して安全教育と訓練
私が思うダイビング中に一番危ないことはパニックを起こすことです。
- 学んだことが実践できなくなる
- ダイビング器材を水中で放棄してしまう
- 恐怖心から水中から逃れようとしてしまう
ダイビング器材の放棄はすぐに外せるレギュレーターとマスクを取ってしまうことが考えられます。
レギュレーターを外してしまうと呼吸できずに水を大量に飲むことになってしまいます。
水面に向かって急に浮上すると、肺の過膨張障害や減圧症のリスクが高くなります。
パニックを起こさないためには、ダイビング理論を学びダイビングスキルを習得することが最善の策です。
初級Cカード取得講習で学ぶダイビングスキルと安全管理
- 座学で知識を得る
- プール講習で実践して理解し練習をする
- 海洋講習で実践、習得をする
座学で知識を得る
- ダイビング器材の機能と目的
- 陸上と水中での物理的変化
- 水中で起こる身体へ影響
- 海浜の環境の変化で受ける影響
- トラブルが起こってしまったときの対処方法
座学でテキストを用いいて学ぶ知識はこの5種類です。
陸上で生活する人間にとって安全面で影響が大きいのは、空気の物理的変化です。
中でも重要なのは空気には圧縮されるという性質があるということです。
空気が圧縮と膨張することで受ける影響は様々あります。
例えば水深10mで水圧が1気圧が増えます。
空気の体積と圧力との関係で有名なボイルの法則によると、圧力が増すと空気はその分だけ圧縮されます。
圧力増加で圧縮された密度の高い空気で呼吸をすると、濃い空気を吸うことで空気の消費が早まります。
反対に水深が浅くなれば圧力が減少し空気が膨張します。
アルキメデスの原理で、押しのけた体積と同じだけの浮力を得ます。
浮力の変化に対応できず水面に吹き上がると身体へ重大な問題が発生してしまいます。
空気が圧縮される性質は、私たちの身体にある空間にも影響を及ぼします。
具体的には、
- 肺
- 副鼻腔
- 中耳
- マスク
の4つです。
マスクはダイビング器材ですが、視覚を確保するには必須なため含めました。
影響のひとつは体内の空気が圧縮されることで圧力の不均衡が起きることです。
スクィーズと呼ばれていて、空気の外側が圧力高く、内側が低い不均衡な状態を言います。
スクィーズは、副鼻腔と中耳とマスクの中で起こります。
圧力を同じにする圧平衡を頻繁にすることで対策で来ます。
副鼻腔は鼻炎など体調でいつも通じている導管が閉じてしまっているので、水中で対処法がなく厄介な症状です。
マスクは鼻から空気を出せば解消します。
中耳はいわゆる耳抜きをすれば解消できます。
耳抜きは、新幹線や高速道路でトンネルに入ったときや飛行機の離陸時にキーンとなった耳の不快感を解消するときにする動作です。
中耳の圧平衡は、痛いのにしなければ鼓膜の損傷、無理に耳抜きで圧をかけても鼓膜の損傷の可能性がるので優しくする必要があります。
もうひとつは、空気が体内で膨張することで起こります。
空気の膨張による障害が起きる可能性が高いのは肺です。
呼吸で肺に取り込んだ空気も水深が浅くなれば膨張します。
呼吸で吸った空気を息止めして出入りを堰き止めてしまうと空気の膨張に対応できず肺胞が破裂してしまいます。
対策は単純です。いつでも息を止めず呼吸することで防げます。
圧縮された濃い空気を呼吸することの影響は消費が早くなる以外にもあります。
標準的な空気の組成は、窒素78% 酸素21% その他1%です。
圧縮された空気で呼吸することで、窒素をたくさん体に取り込むことになります。
窒素のひとつの作用として麻酔作用があります。
体内に取り込んだ窒素の濃度が高くなるとお酒に酔ったような窒素酔いという症状が現れることがあります。
窒素酔いはまさにお酒に酔ったように、判断力が鈍くなったり、思考力を低下させるそうです。
窒素酔いは少し浮上して水深を浅くすれば解消できます。
深い水深に行くリスクを知り潜水可能な水深を守ることで発生は防げます。
もうひとつの特徴は、身体に溶け込むのも排出するのも時間がかかるということです。
過剰に取り込んだ窒素は24時間かけて体内から排出されていきます。
圧力が高まると液体に溶け込むことのできる気体の量が増加するヘンリーの法則があります。
圧力の高い深い水深から圧力の低い浅い水深へ移動したら血液など液体に溶け込める窒素の量が減ります。
呼吸による排出が間に合わないほど急に圧力変化したら、許容量を超えて溶け込めなくなった窒素はその場で気泡化してしまいます。
水深ごとに決められた滞在時間を守ること、決められた浮上速度を守ることで防ぐことができます。
その他にも一般的にも知られている
- リップカレント(離岸流)など危険な波への対処方法
- 潮汐の影響で発生する流れに対する方法
なども学びます。
さらに詳しい内容は、初級Cカードの講習の中で学ぶことができます。
選択の幅が広がるダイビングライセンスの種類について記事はこちら
ライセンス取得講習も掲載
プール講習で実践し理解をする
座学で学んだことをプールという管理された環境内で実践し理解を深めることが目的です。
イメージはダイビング体験を通じた基礎実験です。
まずは自分が自立したダイバーとなるためダイビングスキルを練習します。
初めにダイビング器材を正しくセッテイングすることを学びます。
プールに入り、
- レギュレータから呼吸する練習
- BCの給気と排気を操作して浮力調整の練習
- ゲージを見て正しく空気残圧を見る練習
などダイビング器材の操作方法を練習します。
それと合わせて、
- 耳の圧平衡をする練習
- レギュレーターが口から外れても落ち着いてリカバリーする練習
- マスクの中に水が入ってきたときに水を外に出す方法を練習
など簡単にパニックにならないようにトラブルに対応する方法も練習します。
自分のことができるようになったら、
- 空気を共有し合うオクトパスブリージングの練習
- 緊急時に行う最低限安全な浮上方法を練習
- 疲労ダイバーなど水面から陸までの曳行の練習
など一緒に潜るバディとの助け合いとトラブルが起こってしまったときの対応を学びます。
海洋講習で実践し習得をする
海洋講習では変化する自然環境に対応できるように繰り返し練習して確実にできることを目指します。
プール講習の復習とプールでは練習ができない、
- コンパスを使用した水中ナビゲーション
- 窒素を体外に排出するための減圧停止シュミレーション
を追加で練習します。
プールと海洋の環境の違いは、
- エントリー、エグジットの足場が悪い
- 海水と真水との浮力が違う
- 海洋には波と流れがある
- 海洋の方が水深が深く限りなく広い
- 海洋の透明度はプールより低くなる
の5点です。
環境の違いがあるとは言えプール講習でできたことを海で実行するだけです。
そこまで難しく考えることではありません。
ダイビング現場での安全管理
- 国内ではガイド付きダイビングが主流
- セルフダイビングの受け入れ基準がある
初級Cカードでも認定ダイバー2人組でダイビングすることができるライセンスです。
それでもガイド付きダイビングが主流なのには安全であることがひとつの要因です。
ダイビングガイド業の一般的条件は
- ダイビング認定団体のリーダーコース・プロフェショナルコースの認定を受けている
- 国家資格の潜水士免許を取得している
のふたつです。
リーダーコース(NAUI)プロフェショナルコース(PADI)というのは、インストラクターやダイブマスターのダイビングライセンスです。
ダイビングガイドをすることを前提にして、ゲストの安全を守る方法を学んだのがリーダーコースの認定を受けているダイバーです。
潜水士免許は筆記試験のみです。
ダイビング指導団体のリーダーコースで学ぶ知識の面を補強する内容になっています。
より高度な知識と実践的なダイビング技術やレスキュー訓練を受けたガイドと一緒にダイビングすれば、一般にセルフダイビングより安全性は高まります。
大自然の中で行うダイビングは、ダイビングポイントにより潮汐の影響や海流の発生の癖や地形の特徴があります。
その特徴をよく知るダイビングガイドがいると安全性が高まります。
セルフダイビングするには、安全管理のできるダイバーとダイビングサービスに認めてもらう必要があります。
例えば、セルフダイビングの受け入れ条件は
- バディダイビングであること(2人組以上)
- 当該ダイビングポイントでのダイビング経験が豊富なこと
- 当該ダイビングサービスを利用したことがあること
- プロフェショナル相当のライセンス保持者が含まれること
というような内容が多いです。
ダイビング施設とタンクを貸し出す側も当然事故を起こしたくありません。
- 安全にダイビングを行うスキルと経験が十分あること
- ダイビングポイントの特徴や癖を理解していること
を重視してます。
国家潜水士とダイビングライセンスの違いをまとめた記事はこちら
まとめ:安全管理を学び訓練を受けてからダイバー認定
マリンレジャーに伴う海浜事故の事故者及び死者・行方不明者発生数…令和3年 820人
マリンレジャーに伴う海浜事故の活動別発生件数…スクーバダイビング中 令和3年 35人
- 座学で知識を得る
- プール講習で理解・練習をする
- 海洋講習で実践、習得をする
- 国内ではガイド付きダイビングが主流
- セルフダイビングの受け入れ基準がある
マリンレジャーに伴う海浜事故の発生状況の現状確認からしました。
ダイビング中の事故は令和3年は35人で、継続して減少傾向です。
ダイビングには危険な側面があることを認識しなければいけないレジャーです。
リスク完全に避けるのではなくて適切にコントロールする取り組みをご紹介しました。
ダイバーになる人は初級ライセンスの取得講習から安全管理を学びます。
ライセンス取得後もリーダーコース認定のダイバーをガイドに付けてダイビングすることでより安全に楽しむ方法が一般的になっています。
100%安全なアウトドアレジャーはないです。自立したダイバーになってより安全にダイビングできるようにしていきたいですね。
では。どこかの海で。