Cカードとの違いは何?潜水士の資格とダイビングライセンスのこと
ども。淳です。潜水士試験とNAUIで学ぶことの違いをシェアする記事です。
スキューバダイビングのCカードは、民間のダイビング指導団体の認定書であることはご存知の方も多いと思います。
では、国家資格はないのかというと、日本では潜水士免許というものがあります。
潜水士試験はどのようなことを問われるのかをスキューバダイビングのNAUIで学ぶことを基準に違いを比較しました。
比較結果のポイントは次の通りです。
- 潜水士試験は学科試験のみが行われる
- ファンダイビングを楽しむ一般のダイバーには不要な免許
- 潜水士免許だけではファンダイビングできず、Cカードが必要になる
- 潜水方法の種類、特に送気式潜水について学ぶ必要がある
潜水士試験では、スキューバダイビングで大切なバディシステムや緊急浮上手順など安全管理に関する内容がほぼ出てこなかったのが印象的でした。
関係法令の「労働安全衛生法」は昭和47年(1972年)施行です。
NAUIが日本で1回目のインストラクター認定するトレーニングを開催したのが1970年です。
スキューバダイビングの方が先に安全管理や手順がまとまっていた影響なのでしょうか。
この記事で扱う潜水士試験の内容は、潜水士試験徹底研究 改定4版 を参考にしています。
潜水士試験 徹底研究(改訂4版)の購入先はこちら試験対策本との比較です。NAUIで学び潜水士試験で学ばないことは主要なことに限定した比較です。
潜水士試験の基本情報
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会が実施
- 年間6回実施。(関東安全衛生技術センターの場合)
- 受験資格は特になく、学科試験のみ
- 試験科目は4科目。(潜水業務、送気・潜降及び浮上、高気圧障害、関係法令)
- 試験時間は4時間
- 合格基準は、科目ごとの得点が40%以上でかつ、その合計が60%以上
- 合格率は、75.8%(令和3年統計)
- 受験料は6,800円
潜水士免許証が必要な場面は、海、湖や川など水に潜り何らかの業務を水面下で行う場合です。
具体的には、
- サルベージ事業
- 船舶の船底清掃、点検保守
- 港湾や漁港の護岸工事や橋脚の工事など水中土木作業
- 生態系調査や水中撮影など調査業務
- 警察、消防や自衛隊など捜査・救助・軍事
- スポーツ・レジャー
などのときに必要です。
スポーツ・レジャーでは、ダイビングガイドなど業務の場合は潜水士免許が必要です。
試験実施する安全衛生技術試験協会は厚生労働大臣指定試験機関です。
学科試験を受験できる安全衛生技術センターは全国に7ヶ所しかありません。
インターネットを用いた試験は実施されていないです。
各地区ごとに出張特別試験が行われることがあります。センターが近くにない場合は、ホームページを確認してみましょう。
最寄りの関東安全衛生技術センターの場合、年間6回試験開催されています。
開催回数は比較的多く受験しやすい試験です。合格率も75%以上あり決して難関試験ではありません。
潜水士試験は安全衛生技術試験協会が実施する試験を受験して、都道府県労働局へ免許申請して免許証を入手できます。
潜水士試験に合格しても自動で免許証発行はされません。
忘れずに自分で都道府県労働局へ免許申請を行いましょう。
潜水士とダイビングライセンスとの違い
潜水士 | NAUI | |
---|---|---|
空気と水の比熱の大きさ | 空気の3,600倍 | 空気の3,000倍 |
深度による色が届く深さ | 例)赤 約4m 橙 約11m | 例)赤 約6m 橙 約7m |
安全停止の方法 | 水深3mで5分間(ヘルメット式) | 水深5mで3分間 |
推奨潜降の速度 | 1分間に約10m | なし |
携帯する器材 | 水中電話、信号索(スクーバ以外) | なし |
主な呼称の違い 1 | ボンベ | タンク |
主な呼称の違い 2 | さがり索(潜降索) | 潜降ロープ |
プール講習や海洋実習 | 無し | 標準:プール1、海洋 4 |
潜水作業者の管理、監視 | 連絡員を置く(スクーバは除く) | バディシステム |
試験対策本との比較です。NAUIで学び潜水士試験で学ばないことは主要なことのみです。
一番大きな違いは、潜水士試験は実技試験がないことです。
また、安全管理に大切な二人組で潜水し相互に助け合うバディシステムの説明がありません。
水中マスクに入った水を排出するマスククリアの方法は記載がありますが、レギュレーターリカバリなど基礎的なダイビングスキルの記載はありません。
携帯する器材は、船上から送気ホースを通じて潜水士へ空気を送る潜水方法の場合のみ違いがあります。
スクーバ式の場合は船上に連絡員を配置する規定がありません。
バディシステムの説明がなくや船上との連絡方法に規定なく、スクーバ式の安全管理に対する内容が少ない印象を受けました。
スクーバ式=スキューバダイビングのCカードの方が詳細が充実しているので、Cカードと差異が出ないように細かくは規定されていないのかもしれませんね。
太陽光は波長の長い赤色から順に吸収され青色が一番深くまで光が届きます。
初めの赤色こそ潜水士の方が浅くなっていますが、それ以降の橙、黄、緑、青は全て潜水士の方が深くまで届くとなっていました。
潜水士でいずれの潜水方法でも水中ナイフは必須携帯物になっています。
普段のファンダイビングでは、水中ナイフを携帯しているレジャーダイバーは少ないかもしれません。
でも初級Cカードのテキストにも記載があり、ダイブマスターなどダイビングリーダーのコースでは水中ナイフが本来必要です。
ダイビングライセンスでは学ばないこと
送気式潜水のこと
- 潜水方法の種類
- 送気式潜水の設備及び構成と役割
- 潜水業務の危険性、潜水事故の誘因
潜水方法の分類を学ぶ必要があります。
絶対圧が一定な大気圧潜水と水深により変わる環境圧潜水にまず大別されます。
潜水士試験で出題されるのは、環境圧潜水についてです。
環境圧潜水はさらに、送気式と自給気式にわかれます。
自給気式はスクーバ式で、スキューバダイビングの講習で学ぶ方法です。
送気式もさらに分類されて
- ヘルメット式
- 全面マスク式
- フーカー式
の3種類あります。
スクーバダイバーは送気式潜水の知識がないので特に試験対策が必要な分野です。
潜水士への送気設備の名称、構成・系統と点検期間を学ぶことになります。
いつものスキューバダイビングは携帯したタンクから中圧ホースとレギュレーターとを経由して送気されます。
送気式潜水はスクーバ式潜水より設備が大掛かりになります。
大まかには、船上のコンプレッサから2種類の空気槽と空気清浄機を経て送気ホースを通じて潜水士に送気されます。
装備の面では、ヘルメット式と全面マスク式は潜水靴を履きます。フィンではなく歩くことが前提なんです。
送気式潜水で特有の船上からの送気ホースと水中電話と信号索でつながっているために生じるものと潜水業務によるものの危険性を学ぶ必要があります。
- 水中作業に関する物理的な危険性
- 送気量と浮力による危険性
物理的な危険性とは、
潜水作業船のスクリューへの送気ホースの巻き込みや水中の物体の崩壊や落下による被害及び切断作業でのガス爆発や感電の可能性といった水中土木の関係の危険性があります。
一方、送気量と浮力による危険性は、ドライスーツでダイビングしたことがないと理解が難しいかもしれません。
ヘルメット式潜水の場合、潜水服内部の閉塞空間がひとつ追加されます。
送気ホースは腰バルブに接続され、潜水服の中からヘルメットへ空気が流れます。
送気量が少ないと浮力減少し深く落ちてしまう潜水墜落が起きます。
潜水墜落で水深深くになり送気量が不足すると圧外傷、窒息が起きる可能性があります。
送気量が多いと浮力増加で急激に浮き上がる吹上げがおきます。
推奨浮上速度を超えた速度になるため、減圧症、肺の破裂、窒息を引き起こす可能性があります。
オープンウォーターダイバー講習で学ぶ浮力は、
- マイナス浮力
- プラス浮力
- 中性浮力
の3種類でした。
マイナス浮力が過ぎると潜水墜落、プラス浮力が過ぎると吹上げ、と応用問題的に理解できます。
潜水墜落や吹上げは、ドライスーツでスクーバダイビングのときにも注意が必要です。
ドライスーツ購入の時は必ず講習を受けて操作を学ぶようにしましょう。
法令関係のこと
- 労働安全衛生法
- 労働安全衛生規則
- 高気圧作業安全衛生規則
スキューバダイビングのCカードは、レジャーの民間の認定証なので法令関係は学ばないです。
潜水士は潜水業務の免許です。仕事としての雇用主と労働者という関係性が発生します。
- 労働者の安全と健康の確保のため
- 労働者の教育や健康診断の決まり
- 特に高気圧作業に関する安全と健康の確保
潜水士試験では3つの法令、規則を学ぶ必要があります。
その他のこと
- 神経系の名称
- ヘリウムの特性
人体の神経系統の知識をより詳しく覚える必要があります。
中枢神経系と末梢神経系との2つに大別されます。
中枢神経系は、脳や脊髄に関わるものです。
末梢神経系は体性神経系と自律神経系に分かれます。
さらに、体性神経系は知覚神経と運動神経に分かれ、自律神経系は交感神経と副交感神経に分かれます。
ただ、潜水士試験の中では名称と簡単な機能以上の深掘りはなくどのような場面で必要なのかは不明な内容です。
レジャーダイビングの最大深度40mを超える高深度のテクニカルダイビングで使う呼吸期待として、ヘリウムの特性を学びます。
特性として熱伝導率が大きく呼吸による体熱損失が大きくなります。
深度が深いと水温が低いことと重なって体温保温が重要になります。
対策として海水を加温した温水を洗浄から供給する温水潜水服があるのも面白いです。
物理の法則で、パスカルの原理がNAUIでは取り扱われていなかったのが意外でした。
パスカルの原理。密閉容器中の流体は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当りの圧力をそのままの強さで、流体の他のすべての部分に伝える。
3つのピストンがつながる装置で、1つのピストンにxxニュートンの力を加えた時ほかのピストンに作用する力はxxニュートンの何倍?という問題に少し苦労しました。
まとめ:送気式潜水と法令関係とを試験対策しよう
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会が実施
- 年間6回実施。(関東安全衛生技術センターの場合)
- 受験資格は特になく、学科試験のみ
- 試験科目は4科目。(潜水業務、送気・潜降及び浮上、高気圧障害、関係法令)
- 試験時間は4時間
- 合格基準は、科目ごとの得点が40%以上でかつ、その合計が60%以上
- 合格率は、75.8%(令和3年統計)
- 受験料は6,800円
潜水士とスクーバダイビングのNAUIで学ぶことの違いをまとめると次の通りです。
潜水士 | NAUI | |
---|---|---|
空気と水の比熱の大きさ | 空気の3,600倍 | 空気の3,000倍 |
深度による色が届く深さ | 例)赤 約4m 橙 約11m | 例)赤 約6m 橙 約7m |
安全停止の方法 | 水深3mで5分間(ヘルメット式) | 水深5mで3分間 |
推奨潜降の速度 | 1分間に約10m | なし |
携帯する器材 | 水中電話、信号索(スクーバ以外) | なし |
主な呼称の違い 1 | ボンベ | タンク |
主な呼称の違い 2 | さがり索(潜降索) | 潜降ロープ |
プール講習や海洋実習 | 無し | 標準:プール1、海洋 4 |
潜水作業者の管理、監視 | 連絡員を置く(スクーバは除く) | バディシステム |
潜水士試験に出題されるNAUIでは学ばない重要なことは3つにまとまります。
- 潜水方法の種類
- 送気式潜水の設備及び構成と役割
- 潜水業務の危険性、潜水事故の誘因
- 労働安全衛生法
- 労働安全衛生規則
- 高気圧作業安全衛生規則
- 神経系の名称
- ヘリウムの特性
スキューバダイビングのCカード取得したダイバーが潜水士試験を受験する場合は、送気式潜水と法令関係のことを学ぶ必要があります。
あくまでも潜水士免許は潜水士業務で労働者として働く場合に必要な国家資格です。
ファンダイビングをお客様やバディダイビングで楽しむ分には必要がありません。
ダイビングスキルを仕事にしたいと思った人だけ取得すれば良い免許でした。
ではまた。どこかの海で。