PADIとNAUIとはここが違う。オープンウォーターダイバーテキストを比較してみた。
ダイビング指導団体の種類が多くなかなか決められないな
よく見かけるPADIとNAUIでは何か違うのかな
ダイビングを始めるときに、どこのダイビングライセンスが良いのかを迷ってたら最適なタイミングを逃してしまったではもったいないです。
私は、伊豆のダイビングポイントを中心に約10年間のダイビングを経験してきました。8年の間ファンダイビングを経験した後、NAUIダイブマスターを取得した現役ダイバーです。
そこでこの記事では、世界最大規模を誇るダイビング教育機関のPADIと世界的に歴史あるダイビング指導団体のNAUIとの違いを比較します。比較は初級ライセンスのオープンウォータースクーバダイバーコース(OWD)の学科テキストにフォーカスして行っていきます。
迷いをなくして早速ダイビングを始めちゃいましょう。
この記事を読めば、PADIとNAUIの学科講習での学び方と学ぶ内容の違いに加えて、テキストの特徴が分かります。
オープン・ウォーター・ダイバー コースの学科講習テキストを比較した結果は、次の通りです。
PADIとNAUIとの学科講習テキストの違いを把握して、自分に適したダイビング指導団体のライセンスを取得したい人は、ぜひ最後まで読んでください。
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PADIとNAUIの基本情報
ダイビングをするにはダイビングライセンスが必要です。でも、法的な免許証ではなく特定のダイビング指導団体が発行する認定書(Certification Card : Cカード)です。そのため、初めに発行元のダイビング指導団体を決める必要があります。
ライセンスの取得候補となる著名なダイビング指導団体のPADIとNAUIの基本情報を確認しましょう。
PADI とは
世界最大のスクーバダイビング教育機関で、180ヶ国以上にプロフェッショナルメンバーとダイブセンターが存在し、世界のダイビング人口の6割以上を占めるとまで言われています。そのため世界中ほとんどのダイブサイトにダイブセンターやダイビングショップがあります。
NAUI とは
1960年にアメリカでダイビングインストラクターコースを開催し、世界で初めて民間のスクーバダイビング指導員組織が誕生したのをきっかけに始まりました。そのため、NAUIの歴史がレジャーダイビングの歴史といっても過言ではありません。
歴史や国際的な枠組みなど独自の視点でダイビング指導団体を解説した記事はこちら
PADIとNAUIの学習順序の違い
- PADIは幅広く段階的に学び、NAUIは1つ1つ徹底して学ぶ
PADIの教育システムは、テキストが5章に分かれていて章が進むにつれて知識の幅を広げていくような構成になっています。簡単な内容から初めて徐々に専門的な知識へと段階的に進むことで、基本的な知識の上に次のレベルの知識を積み上げるアプローチです。
ひとつの章の中に、
- 物理や環境などの理論
- ダイビング器材の構造
- ダイビングスキル
- 限定水域ダイブの予習
の各要素が含まれています。
限定水域ダイブは主にプールで行うダイビング実習で、5章に分かれる知識の開発が5回行われる限定水域ダイブの講習内容に対応しています。
NAUIの教育システムは、テキストがチャプター(章)11までありPADIよりも多く分けられています。章ごとに器材や物理、水中での身体など学習内容が完結し理解してから次の分野に進みます。つまり、基礎から専門的な知識まで徹底的に学んでから次の分野に移っていくアプローチです。また、限定水域ダイブには対応していないです。
PADIもNAUIも学科講習が終わってから、プールなどで限定水域ダイブの講習を行うことに違いはありません。
ただし、次のような違いがあります。
- PADIは、学科テキストに行うスキルの手順と達成基準が説明されている
- NAUIは、学科テキストに達成基準の明記はなくインストラクターから伝えられる
NAUIもダイビングスキルの手順は説明されていますが、ライセンス講習中にだけ行うことに関しては手順が書かれていないです。
PADIとNAUIの学習内容の違い
PADIとNAUIの呼び名の違い
PADI | NAUI |
---|---|
サイナス | 副鼻腔 |
アルティチュードダイビング | 高所潜水 |
緊急減圧 | 減圧停止 |
BCD | BC |
限定水域ダイブ | コンファインドウォーター |
リクリエーションダイブプラナー | ダイブテーブル |
PADIとNAUIの始まりは同じで、共に現在の本部もアメリカにあります。そのためテキストの原本は英語で書かれていて、日本語に翻訳したテキストを使用しています。
呼び名の違いは、
- カタカナ表現にするか日本語に翻訳するか
- 日本語に翻訳した時の違い
- 英語読みをカタカナに変換したときの違い
が原因と思われます。
PADIでは、元々あった減圧不要ダイビングの最大許容時間を割り出すツールをダイブテーブルと呼び、リクリエーションダイビング専用のものをリクリエーションダイブプラナーと呼び区別しています。
PADIとNAUIの数値の違い
PADI | NAUI | |
---|---|---|
浮上速度 | 1分間に18m | 1分間に9m |
窒素酔いの危険性 | 30m | 24m |
頭から失われる全身の体温損失率 | 75% | 50% |
ダイブテーブルの適応水深1 | 10mから42m | 12mから40m |
ダイブテーブルの適応水深2 | 10.5m以浅は全て10mを適用 | 6mから12mは12mを適用 |
ダイブテーブルの反復グループ | 26区分 | 12区分 |
ほとんどは米国慣習単位系をSI単位系に変換したときの誤差と考えられる範囲です。
浮上速度の差が大きく見えますがテキストの表現違いのためで、安全な浮上速度は1分間に18mが限度であることは変わりありません。PADIでは、1分間に18mを制限速度と考え遅ければ遅いほど良いとあります。推奨速度の明記はありません。NAUIでは、推奨速度が1分間に9mです。いかなる場合でも1分間に18mを超える速さで浮上してはならないと明記されてます。
ダイブテーブルを簡単に説明するとダイビングの事前計画する道具です。
- 1ダイブ目で水深何mに何分間居るのか
- 1ダイブと2ダイブの間を何分間休憩するのか
- 2ダイブ目で水深何mに何分間居るのが限界なのか
といった計画を立てることができます。
ダイブテーブルの反復グループの区分が多いPADIの方がより誤差の少ない潜水計画の策定が可能になります。
PADIではダイブテーブルの詳細は別冊子と分かれています。ただ、ダイブプラナーを使用した潜水計画の紹介は本テキスト内で学びます。
PADIで学ぶこと学ばないこと
- 25種類と豊富なハンドサイン
- 器材バディチェックの方法(プレダイブ・セーフティ・チェック)
- パワーインフレーターの中圧ホースを外す(限定水域ダイブ)
- 水中マスクなし呼吸を1分間行う(限定水域ダイブ)
- エア切れの練習でタンクのバルブ閉める(限定水域ダイブ)
- フリーフローするレギュレーターからの呼吸方法(限定水域ダイブ)
- 水中マスクなしで水中移動15m以上行う(限定水域ダイブ)
- 大気圧と水圧の項でゲージ圧と絶対圧の違いを学ぶ
- 空気消費量の計算方法を学ぶ
- 視界不良ダイビングでのコンタクトにバディーロープを使う事
PADIでは、ダイバーがパニックに陥る原因になりやすい水中マスクのストレスに対するトレーニングが充実しています。
NAUIでも水中マスクのマスククリアとマスク脱着は行いますが、基本的には水中移動のように高ストレスのトレーニングは行われていないです。ただ、マスク脱着を確実にできることが達成基準なので、水中マスクなしで泳ぐトレーニングを取り入れても良いのがNAUIの柔軟性です。
一番の驚きは、PADIでのエア切れの練習、予備の空気源の練習(オクトパスブリージング)で実際にタンクのバルブ閉めてレギュレーターから空気が吸えないことを体験することです。NAUIではエア切れを想定するだけで実際にタンクのバルブは閉めません。
器材バディチェックをプレダイブ・セーフティ・チェックという方法で文書化して説明しています。Begin With Review And Friend の文章に合わせてチェック手順が明記されていて、受講者が読んで分かり、チェック漏れがでにくい工夫が良いです。
次はNAUIの方が充実している内容です。
NAUIでは空気消費量の計算公式を学びます。学科講習では例題を解くと共に、オープンウォーターダイブで自分の空気消費量を計算します。自分の空気消費量(リットル/分)を把握しておけば、安全な潜水計画にとても役に立ちます。
肺の過膨張障害の学習で、気胸やエアエンポリズムの具体的な障害に言及してより詳しく解説をしています。
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学科テキストから分かるPADIとNAUIの特徴
学科テキストを比較して分かったPADIとNAUIのダイビングライセンス取得への進め方の違いをまとめます。
- 実習回数がテキスト上に明確になっている
- 限定水域ダイブの予習の項目が充実している
- 実習の回数や内容がテキストで明確になっていない
- 物理的特性や潜水計画など理論学習が充実
PADIとNAUIのダイビングライセンス取得の進め方には、それぞれ特徴があります。
PADIは限定水域ダイブが5ダイブとオープンウォーターダイブが4ダイブと最低限の講習の回数がテキストに明記されています。
ダイビングの理論学習や器材の取り扱い、スキルの説明に留まらず、ダイビング全体を順を追って文章で説明しています。特に、限定水域ダイブの予習が充実していて、個々のスキルの達成条件がライセンス受講者に提示されているのが特徴的です。スキル練習スレートという認定スキルの達成度を書くものもあります。PADIはゴールとプロセスが文書化され一般に開示されている安心感があります。
一方、NAUIでも標準的な内容は限定水域ダイブが2ダイブとオープンウォーターダイブが4ダイビングでPADIと変わらないです。ただ、テキストに最低限の講習回数の提示はないです。
ライセンス認定の実習内容や達成基準についてもテキストに提示されていないです。インストラクターの裁量の下、柔軟な方法で認定基準に達するように講習が行われているため個別で指示を受けます。
重要なスキルは個別にテキストの中で説明されていますが、実習で行うトレーニングスキルだったりダイビング器材セッティングから順を追って説明したりといった内容は説明されていないです。その分、ダイビングに関する物理的特性など理論学習にページが割かれていて、特に空気と水の物理的特性の違いの学習内容が充実しています。
まとめ:PADIは幅広く段階的に学び、NAUIは1つ1つ徹底して学ぶ
- PADIは幅広く段階的に学び、NAUIは1つ1つ徹底して学ぶ
PADIとNAUIで異なる呼び方と数値はいくらかありましたが、英語のテキストを日本語に翻訳するときやSI単位に変換したときの違い程度でした。
- 25種類と豊富なハンドサイン
- 器材バディチェックの方法(プレダイブ・セーフティ・チェック)
- パワーインフレーターの中圧ホースを外す(限定水域ダイブ)
- 水中マスクなし呼吸を1分間行う(限定水域ダイブ)
- エア切れの練習でタンクのバルブ閉める(限定水域ダイブ)
- フリーフローするレギュレーターからの呼吸方法(限定水域ダイブ)
- 水中マスクなしで水中移動15m以上行う(限定水域ダイブ)
- 大気圧と水圧の項でゲージ圧と絶対圧の違いを学ぶ
- 空気消費量の計算方法を学ぶ
- 視界不良ダイビングでのコンタクトにバディーロープを使う事
PADIの方がダイビングスキルに関する説明が多いことが、テキストに掲載されている学習内容の違いからも見て取れました。
オープン・ウォーター・ダイバーの範囲では、PADIでもNAUIでも安全にダイビングを楽しむための基本的な内容に大きな違いはなかったです。PADIはステップが詳細に文書化されていているため、教育機関という雰囲気があります。一方、NAUIは理論学習が充実していて、実習の方法はインストラクターの裁量に委ねられるため、指導団体という雰囲気が強いです。
特にこだわりがなければ、通いやすいダイビングショップがある方を選ぶだけで十分でどちらを選んでも後悔しないでしょう。迷いを捨ててダイビングライセンス取得に一歩踏み出してみましょう。
ではまた。どこかの海で。